
家で仕事をしているときの電気代や車のガソリン代など、プライベートの生活費と仕事で使っている分が混ざっている場合はどうすればいいでしょうか?
聞いた話によると「家事按分」という方法で仕事の分の割合を経費にできるそうなのですが、決め方とか計算方法がわからなくて…
この記事ではこのような悩みについて、税理士や税務署に確認した内容をもとに解説しています。
3行でわかるこの記事のポイント
- 家事按分とは生活費に混ざった経費を一定基準の割合で分けて計上すること
- 自宅で仕事をしている場合は電気代・通信費・家賃なども一部を経費にできる
- 家事按分の割合は自分で決めて計算する
本記事の信頼性


家事按分(かじあんぶん)とは?


プライベートの生活費と仕事のために使った費用を一定基準の割合で分けて計上することを家事按分といいます。読み方は「かじあんぶん」です。



按分には本来「物品や金銭などを基準となる数量に比例して分ける」という意味があります。
主婦で起業している人は、自宅で仕事をすることが多いですよね。
また個人事業でも使うスマホを家族割を利用していたり、 インターネットと携帯代をまとめて支払う方が安くなったりと、 夫や家族の名義で支払うほうがお得になる場合があります。
この場合の水道光熱費・通信費・家賃などの一部は売上のために必要な経費と考えることができるため、経費で落とすことが認められています。
家事按分の対象となる主な費用


しかし、自宅で仕事をしている場合の経費はプライベートとの区別がつきにくいものが多いです。
以下のような費用が代表的な例です。
- 自宅兼事務所やサロン・教室などの水道光熱費・家賃
- 車のガソリン代・車検代・駐車場・損害保険料・購入費用
- パソコンや携帯電話などの通信費
- 持ち家の場合の固定資産税・保険料・住宅ローンの利息分



このように家計やプライベートと個人事業が被っている費用を総称して家事関連費といいます。
家事按分の決め方と計算方法


まず上記のような家事関連費を経費にするには、仕事で使っていることが大前提です。
そして生活費の中から経費になる部分を割合で分けます。按分の割合は勘定科目ごとに決められているわけではなく、自分が決めた基準で設定します。
そのためどうしてその割合で分けたのか?を数字で明確に説明できるかどうかが重要です。
家事関連費の按分については国税庁のWebサイトでは以下のように定義されています。
令第96条第1号に規定する「主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要」であるかどうかは、その支出する金額のうち当該業務の遂行上必要な部分が50%を超えるかどうかにより判定するものとする。ただし、当該必要な部分の金額が50%以下であっても、その必要である部分を明らかに区分することができる場合には、当該必要である部分に相当する金額を必要経費に算入して差し支えない。
【国税庁】家事関連費(第1号関係)
…これではちょっとわかりにくいですね。要約するとポイントは以下の2つです。
- 家計の中で個人事業の経費と考えられる部分が50%を超えているかどうかで判断する。
- 個人事業で使用している部分が仮に50%以下であっても、明確な根拠があるのなら経費として計上できる。
なので、家計やプライベートからの支出でも明確な根拠を証明するための書類(領収書・明細書・請求書)を必ず残しておきましょう。
名義はなるべく本人であることが望ましいですが、根拠が示せるのなら夫や家族の名義でも大丈夫です。


水道光熱費


自宅でサロンや料理教室を開いていたり、一部屋を作業スペースにしていたりすると、電気代・水道料金・ガス料金がかかります。
これらは普段の生活費でもあるため、仕事で使っている分を割合で出し、経費として計上します。
水道光熱費は使用時間や使用日数を目安にして割合を出します。正確な割合を出すのは難しいので、常識の範囲内で合理的に判断しましょう。
使用時間による計算例


1日に電気を使っている時間が12時間として、そのうち仕事をしている時間が6時間とすると、按分の割合は6時間÷12時間=0.5(50%)となります。
1ヶ月の電気代が10000円だったとすると、経費にできるのは 5000円となります。
- 6時間÷12時間=0.5(50%)
- 10000円×0.5=5000円
通信費


家事按分の対象となる通信費には以下のようなものがあります。水道光熱費と同様に、使用時間や使用日数を目安に割合を出します。
- 固定電話の利用料金
- 携帯電話・スマートフォンの利用料金
- インターネット開設工事の費用
- プロバイダー料金
- インターネット回線利用料
- Wi-Fi利用料金
使用日数による計算例


例えば1ヶ月の携帯電話料金が8000円だったとして、そのうち21日間はスマホで仕事用のブログを書いた場合、経費にできるのは 21日÷30日(1ヶ月)=0.7(70%)となります。
1ヶ月の携帯電話の料金が8000円だったとすると、経費にできるのは8000円×0.7(70%)=5600円となります。
日常生活で使った残りの8000円×30%=2,400円は経費には含めません。
- 21日÷30日=0.7(70%)
- 8,000円×0.7=5600円
自動車関連費


仕事で車を利用している場合は、走行距離や乗車日数を目安に割合を出します。以下のような項目が家事按分の対象です。
内容 | |
車両費 | ガソリン代 車検費用 点検費用 洗車代 部品・消耗品 月極駐車場料金 |
保険料 | 自賠責保険 任意自動車保険 |
租税公課 | 自動車税 自動車重量税 自動車取得税 |
減価償却費 | 車の減価償却によって発生する費用 |
支払利息 | 自動車ローンの利息部分 |
走行距離による計算例


車両費の按分は使用日数や走行距離を目安にします。
走行距離による按分の場合、上の図のように1年間(1ヶ月でも可)の走行距離のうち、仕事で使用した距離が何%かで按分割合を出します。
仕事で使用した分の走行距離をそのつど記録する必要がありますが、使用日数よりも合理的で信ぴょう性のある数値が出せます。
- 6000km/年÷1万km/年=0.6(60%)
- 10万円/年×0.6=6万円
家賃・住居費


自宅(持ち家・賃貸物件)で仕事をしている場合は、自宅全体の底面積(㎡)に対する仕事部屋の面積の割合で按分します。
一部屋をすべて仕事に使っていなくても按分は可能です。その際は、業務に関連する資料を収納している棚やパソコンの置いてあるデスクなどのスペースの面積を測って割合を出します。
賃貸物件 | 家賃 |
持ち家 | 建物の減価償却費・固定資産税・住宅ローンの金利部分・火災保険料 |
自宅兼事務所・サロンの場合は住宅ローンの金利部分のみ按分して経費として計上することが可能です。
元本部分は借入金となり、経費として計上することはできません。
こちらは条件が当てはまっているなら住宅ローン控除(事業部分を除く)が受けられる場合があるので確認してみてください。
他には固定資産税や減価償却費も家事按分の対象になります。
仕事で使用している場所の面積による計算例


- 10㎡÷50㎡=0.2(20%)
- 10万円/月×0.2=2万円
【まとめ】家事按分で経費にできる自宅の費用は意外と多い
家計やプライベートとかぶっているけれど計上できる経費は意外とたくさんあるものです。「分けれないし、面倒くさいから…」と経費にするのをあきらめていませんでしたか?
按分の割合の決め方は、第三者に対して具体的で明確な根拠が説明できることがポイントになります。
家計との区別があいまいでも、個人事業に関する費用は経費としてきちんと計上しましょう。
最後までお読みいただきありがとうございました!
当サイトではコンテンツの正確性・妥当性の確保に努めておりますが、執筆時点の各種法令に基づき記載をしているため、記載内容が必ずしも最新の情報であるとは限りません。
わからない場合は自己判断せずに、関係各所やお住まいの地域の税務署の窓口か電話で相談しましょう。
税務に関してのお問い合わせは以下のサイトに連絡先があるので参考にしてください。
【参考】税についての相談窓口 国税庁